鶴吹の気持ち

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鶴吹のメンバーには音の風景が見えていたに違いない

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遠州灘の「海鳴り」
 今から20年ほど前に高橋ひろみによって作曲された「海鳴り」は、遠州灘をイメージした曲である。
静岡県の御前崎から愛知県の伊良湖岬にかけて広がる遠州灘は、天候が変化するときに不思議な海鳴りを発し、その音は古くから「波小僧」と呼ばれる。
今でもこの海鳴りは、身近な気象情報として地元の人々の生活に溶け込んでおり、平成8年度に環境庁(現・環境省)が選定した「残したい日本の音風景百選」に、「遠州灘の海鳴・波小僧」として認定された。

音の風景
「海鳴り」の演奏時間は約7分。打楽器と金管が重厚に海の荒々しさを奏でれば、木管の音色は穏やかな灘の海面を漂い、寄せては返す潮騒の心地よい揺らぎがダイナミックに表現されている。目を閉じれば、いにしえより海鳴りに畏敬の念を抱いてきた海辺の人々の暮らしさえ浮かんできそうだ。
環境音としての海鳴りと人々の暮らしがリアルな映像として想像できるような曲だ。



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10代の感性が共鳴する
「海鳴り」は、高橋が15歳のときに作られた曲である。
演奏した生徒たちは、ほぼ同年齢の女性が創り上げた曲への想いを追体験していたはずだ。
作曲者と演奏者の2つの感性が共鳴することで、「海鳴り」という楽曲は、単なる景色の表現から、同じ世代が同時に感じることができる心象風景の表現へと高まっていったのである。
「海鳴り」を演奏している生徒たちの姿は、実に凛々しく誇らしげだ。一人ひとりが気持ちを込めて楽器を演奏するとき、放たれた音色が交じり合った場所に、海鳴りという音の風景が見えていたに違いない。


鶴吹の凄み

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演奏会場を包む一体感
「持てる力を発揮し、心を込めて演奏ができれば、きっと自分たちに感動できる。そして完全燃焼している鶴吹の姿を目の当たりにした方々にも、同時に感動を味わってもらえる」
生徒たちとの心の交流に裏打ちされた齋藤さんの確信は、新しい感動の法則を創造し続ける原動力になっている。

大会でも地域でも全力で演奏
 毎年5月に鶴ヶ島ケアホームで行われている「ペンギンまつり」には、新1年生もダンスで参加。様々なジャンルの音楽を取り入れた演奏で、幅広い年齢層の方々を楽しませている。
今年8月には、コンクールの合間に「池の台サマーフェスティバル」に出演。地域の方々に、 今まさに自分たちが心を込めて取り組んでいる「海鳴り」を披露し、喝采を浴びた。
コンクールでも地域でも、全力で演奏する態度が多くの人々に感動を与えている。



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鶴吹という居場所
 吹奏楽部のメンバーは、自分たちの部活動を「鶴吹」と呼ぶ。そこには一体感に支えられた誇りと親しみが感じられる。
鶴吹には、自分と同じように「心で演奏!みんなで感動!」という部訓を心の中心に持つ仲間がいる、という安心感のなかで、一人ひとりが精一杯演奏に打ち込める環境がある。そこは、かけがえのない、自分が自分であるための大切な「居場所」なのだ。